欧州エネルギー危機についてアメリカ人が知っておくべきこと 

クリスマスシーズンが近づくにつれ、アメリカ全土でクリスマスのイルミネーションが長い冬の夜を照らすようになりました。電気代が高騰するなか、庭のライトアップや照明を減らしている家庭もあるかもしれませんが、ヨーロッパのクリスマスイルミネーション事情はもっと悲惨です。多くのヨーロッパ諸国が、クリスマスのイルミネーションを減らすか、完全に取りやめるよう国民に呼びかけているか義務付けているため、ヨーロッパでのクリスマスイルミネーションの電飾は規模が大幅に縮小されるでしょう。この年末年始の緊縮財政は大きな犠牲を強いるものではありませんが、アメリカ人にとっては、同じような措置が国内で起こるとは想像しにくいかもしれません。  

米国ではガソリン価格が夏場の高騰以降、大幅に下落し、2022年第1四半期の水準に戻りました。このガソリン価格の下落は、暖かな秋と相まって、エネルギーコスト上昇に関して、アメリカ人の間にある程度の安心感をもたらしたかもしれません。しかし、欧州で進行中のエネルギー危機は、世界的なエネルギー供給不安と経済リスクを生み出し続けています。米国の電力価格にも影響を与える可能性があり、この危機は何年にもわたって欧州の財政を悪化させる可能性を秘めています。  

これまでの経緯  

ロシアによるウクライナ侵攻が現在のエネルギー危機の主なきっかけとなりましたが、侵攻以前から世界の原油価格は上昇傾向にあったことを念頭に置いておく必要があります。これは、コロナ禍とその後の経済の再稼働による需要増のなかでサプライチェーンに問題があったことが主な原因であり、これにより、ヨーロッパが輸入石油に依存していたことが浮き彫りになりました。欧州諸国の間では、化石燃料の消費量と再生可能エネルギーや原子力の消費量に差があり、英国やイタリアなど一部の国は石油供給の減少に対してより脆弱になりました。しかし、ロシアの侵攻後の数か月間、欧州理事会(EC)はロシアへ制裁措置を講じるため、かつてないスピードと十分な結束力で動きました。  

今年の夏、欧州理事会は限られた例外を除き、ロシアからの石油輸入のほぼ90%を禁止しました。石油輸入の減少が経済的破局を招く恐れがあったため、欧州理事会はその後、ガス需要を15%削減し、市民や企業への援助を実施し、価格上昇の恩恵に浴した化石燃料企業には価格引き下げを求める措置を可決しました。欧州理事会はまた、来るべき冬に備えてガス供給の強化も図りました。  

欧州の冬季に対する備えについては議論の余地があり、天候が重要な変数となるかもしれません。再生可能エネルギーの生産が困難な状況になれば、広範囲に及んで停電が起こる恐れもあります。  

欧州経済への影響 

家計の負担を軽減するための補助金の額は7000億ユーロを超えており、この数字は確実に増加するでしょう。こうした補助金の負担は政府支出に支障をきたし、それは増税につながります。英国は最近の政治的混乱のなかで、エネルギー価格の凍結期間を2年から半年に短縮しましたが、これは政府がいつまでも負担を払えるわけではないことを表しています。  

経済的負担は欧州の製造業でも感じられるでしょう。世界市場に合わせて価格が速やかに下落しなければ、エネルギー価格の高騰が逆風となります。したがって、欧州の投資環境は当面厳しいものとなるでしょう。   

米国経済への影響  

世界的なエネルギー供給の逼迫は、米国の物価にも影響を与えるでしょう。この冬の電力卸売価格は20%から60%上昇すると予想されており、ニューイングランド地方が最も高くなる可能性が高いといわれています。インフレの他の影響も存在するなか、これは米国の消費者や製造業者にとって歓迎すべきニュースではなく、景気後退に拍車をかける可能性があります。  

米国内の供給制約の一因は、液化天然ガス(LNG)市場が不透明なところにあります。米国のLNG企業は、最近になってようやく輸出が可能になったLNGの出荷を通じて、欧州のエネルギー需要の一部を緩和するのに貢献してきました。良い面としては、シェニエール・エナジーのような米国のLNG供給会社にとってはプラスの材料となり、2022年には同社の株価が急騰しました。米国市民が冬のエネルギー料金の上昇を目の当たりにすることで、LNGの国内供給を増やすよう政治的圧力がかかり始めるかどうかが注目されるところです。  

今後数か月はエコノミストたちはアマチュアの気候学者となり、天気予報を見ながら、ヨーロッパ、アメリカ、そして世界的な最悪シナリオを避けるために、穏やかな冬になることを願うことでしょう。一方、米国人は、きらびやかなイルミネーションの少なくとも数本は先手を打って消灯するよう検討した方がいいかもしれません。  

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