12月に起こった日銀サプライズ:経済政策か、それとも為替にかかわる政治的圧力か?

市場に衝撃を与えた予想外の動きとして12月20日、日銀は政策決定会合で債券利回りの上限を0.25%から0.5%に倍増させ、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策に調整を加えました。  

日銀の動きのニュースが世界市場に広がると、意図せざる結果として、米国の株式と国債が(一時的とはいえ)急落しました(価格と逆の動きをする国債利回りは一時的に急上昇)。これは、米国債や海外資産(米国株を含む)を最も多く保有している日本の投資家が、日銀のニュースを聞いて海外保有資産の清算や日本への資金還流を始めたことによるものでした。  

このような状況から、日銀が今後の政策決定会合でイールドカーブを微調整するたびに、米国の国債や株式市場にさらなるショックが起こることが予想されます。しかし今回の動きは、日銀がよりタカ派的な政策方向へ転換することを示唆しているのでしょうか?おそらくそうではないでしょう。  

この動きを後押ししたのはインフレか、それとも円か?  

今回の政策変更前、G7諸国の中でインフレ抑制のための金融引き締めを行っていないのは日本だけでした。黒田日銀総裁の金融緩和からの離脱に対する主張は、1年前にFRBが言っていた「インフレは一過性のもの」と類似しており、日銀は、インフレは短期的なエネルギー高騰やサプライチェーンの混乱による一時的なものに過ぎないという見方を否定する十分な証拠を認識していませんでした。  

日本のインフレ率はG7諸国と比べて著しく低く、日銀は持続的な賃金上昇の兆しが見られるまでは引き締めを始めないと繰り返し明言していましたが、それは早々にも難しくなるでしょう。  

市場評論家の中には、YCCの調整は政策正常化に向けた日銀の第一歩であるとの見方もあります。しかし、私は個人的には、日銀はYCCを放棄することはなく、微調整を加えるだけだろうと考えています。日銀が引き続き利回り上限の調整を随所で続ける可能性はありますが、2024年までは基準金利を現在のマイナス0.1%から引き上げたり、大規模な量的引き締めを始めたりすることはないと思われます。日本経済は依然として脆弱であり、現段階での金融引き締めには耐えられないでしょう。  

黒田総裁は、先月の動きは現在の緩和政策からの逸脱ではないと強調し、「市場機能の改善」を図るものだったと主張して、この措置を擁護しました。私は、先月の動きはインフレ対策にはほとんど意味のないものだったと考えています。政策変更のタイミングを裏付けるようなカタリストがなかったため、おそらく「市場機能の改善」にもあまり効き目はなかったでしょう。 

しかし、2022年を通じて続いた円安は(FRBや他の中央銀行のタカ派的な政策もあって)岸田政権にとって政治的なダメージとなり、日本にインフレが忍び寄っている主な原因のひとつとみなされてきました。私の意見としては、日銀と黒田総裁は財務省や日本政府から、円安阻止のための行動を取るよう圧力を受けているのだと考えています。  

この予想外の動きは確かに円の急騰を引き起こしました。しかし、FRBが積極的な引き締めを続け、先月の日銀の動きが単なる一過性のものであったことが明らかになれば(つまり、インフレに立ち向かうための持続的な努力の一環ではなかったことが明らかになれば)、円は徐々に以前の水準に戻っていくでしょう。  

先月の衝撃的な発表で、黒田総裁は厳しく批判されています。黒田総裁の任期はあと3か月しか残っていないことを考えると、なぜ今このような行動をとったのか多くの人に疑問を抱かせました。しかし、黒田総裁は市場が最も予想していないときにサプライズ的な動きをとることでも知られています。それは、今後の政策変更に関してFRBのジェイ・パウエル氏が事前に段取りしたり継続的に予告したりするのとは全く異なります。対照的に、黒田総裁の発表はまとまりがなく、長期戦略を欠いているように感じられます。  

今回の動きで日銀の信頼性は揺らいでいます。現在は投機筋の金利市場への参入を促し、新たな0.5%の上限を試しているところです。黒田総裁は「市場機能の改善」を意図した一回限りの措置だと主張していますが、多くの人は近く再び上限が0.8%に引き上げられると予想しています。このような取引が、市場環境の改善という意図を満たすとは考えにくいですが、その一方で、2023年に向けて円相場は投資家の注目の的であり続けるでしょうし、そうあるべきでしょう。 

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